しーたかの日本酒アーカイブ

日本酒の魅力について、もっと語りたくなったからブログを始めたんだ

滋賀県『笑四季 僕が僕であるためのエトセトラ 純米吟醸生 滋賀渡船二号』復活の酒米・渡船で勝負!真摯な模索の跡が伺えます。

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こんにちは、しーたかです。

今回は当ブログ初となる、滋賀県の日本酒を紹介します。

『僕が僕であるためのエトセトラ 純米吟醸生』です。f:id:sakearchive:20170515152519j:image
意味深なネーミングですね。AKB48とか乃木坂46とかのシングル曲でありそうな感じのタイトルです(笑)

こんな訳のわからないネーミングの酒を出してくるのは、あそこしかない。そう、滋賀県甲賀市の笑四季酒造ですね。

笑四季と言えば、貴醸酒のモンスーンシリーズを筆頭に、甘口の日本酒で市場を開拓してきた銘柄。

私も日本酒を少しずつ飲みはじめた頃にさんざんお世話になりました。

ラベルやネーミングのみならず、味もキャッチーでわかりやすい。

当時ワインラバーだった私は「日本酒でこんな世界観のある酒があるのか!」と蒙が啓かれた気分になり、以降ずぶずぶと日本酒沼にハマっていったのを思い出しました。

アバンギャルドな酒の多い笑四季、造るのは蔵元杜氏の竹島充修(たけしまあつのり)氏。

自ら日本酒業界のマッドサイエンティストと名乗る氏は、自らの思想を酒造りに乗せ、手を変え品を変え、常に挑戦的な商品をリリースしています。

この辺り『新政』の佐藤氏に似ていますが、『新政』が芸術作品なら『笑四季』はラボで生まれた実験的作品と言ってもいいかもしれません。(もちろん『新政』も頒布会シリーズを中心に実験的な要素はもちろんありますけどね。)

『笑四季』の竹島氏はというと、前年と同じ酒を再現する気が全くないかのごとく、同一シリーズでも毎年味をガラリと変えてきます。

そうかと思えば、新シリーズのリリース、シリーズの統廃合に忙しなく、消費者に息つく暇を与えてくれません(笑)

何をしてくるかわからない感じというか、この危うさが『笑四季』の魅力なんだろうなぁ。

『 笑四季 僕が僕であるためのエトセトラ』意味深なタイトルの意味は地元・滋賀県にヒントが!

で、今回いただく『僕が僕でるためのエトセトラ』。

最初は「またわけわからんネーミングの酒を出してきたなー」という印象しかなかったのですが、よくよく考えてみると、原料米にヒントがあるようです。

まずは裏ラベルを見てみましょう。
f:id:sakearchive:20170515152531j:image
原料米は滋賀県産の渡船。ご存じの方も多いと思いますが、山田錦の父と言われる酒米(正確には短悍渡船)ですね。

明治時代に品種登録をされ、その後は滋賀県の主力米として栽培されてきたのですが、昭和中期にぱたりと生産が途絶えてしまいます。

近年では、農家の人ですら見たことがなく、文献にしか載っていない幻の酒米と言われるようになった渡船。

復活したのはここ10年ほどのこと。他県産米(多くは兵庫県の山田錦)を重用する時代から地元産米に回帰するムーヴメントを汲んで、滋賀県のJAグリーン近江酒米部会によって復活を遂げました。

渡船復活の経緯についてはこちらの記事が詳しいので、気になる方は読んでみてください。

510kara.com

酒米の由来を知ると『僕が僕であるためのエトセトラ』のネーミングもさもありなんといったところでしょうか。

純然たる滋賀県の酒米を使って、テロワールを表現する、そんな覚悟がうかがえますね。

『僕が僕であるためのエトセトラ』実飲!いつもの笑四季とは違う気むずかしい堅さを感じる酒でした。どこまでもシリアスに、地元のルーツに迫った意欲作です!

能書きはほどほどにして、さっそく飲んでみましょう。

グラスに酒を注ぐと、うっすらとクリーム様の香り、しかも閉じ気味だ。あとバナナのようなニュアンスもあるけど、どうにも気難しい酒の予感がします。

口に含むと果実系7:米3ぐらいの甘み。この辺は50%精米らしい爽やかさがあります。やや遅れて酸が顔を覗かせてきます。

ここから淡麗っぽい酒の流れになるのかなーと思いきや、酸味に渋み苦みが混じりあってじわじわとした辛さを感じるフィニッシュ。

全体的にそこはかとない硬質さを感じるお酒で、どこかミステリアスな雰囲気がありますね。

普段あまり日本酒を飲まないような人が飲んでもきちんと愛想笑いしてくれる、そんなサービス精神もあるんだけど、本心は簡単には見せないよという、気難しさが滲み出ています(笑)

なんていうのか、アンニュイなお姉さん系日本酒とでも言っておきましょうか。

酒が語りかけてくるメッセージの行間を読める、熟練度の高い酒徒にこそオススメ。

笑四季酒造では、渡船での仕込みはまだまだ手探りの段階とのことなので、来期以降さらにポテンシャルを引き出してくるかもしれません。

次の造りも要注目!さらにブラッシュアップして定番商品になるといいですね~。

それではまた。

こだわりの地元産原料でテロワールを表現するスタイル。今後の日本酒業界のスタンダードになってほしいと思います。オススメ記事はこちら↓
sakearchive.hatenablog.jp

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