こんにちは、しーたかです。
日本酒の味にもトレンドというものがありまして、淡麗辛口の新潟酒が流行った時代、香りプンプンの吟醸酒が流行った時代がありました。
近年では『十四代』や『飛露喜』に代表されるように、芳醇旨口路線の酒が幅を利かせるようになり、ここ数年は、芳醇旨口を基本線としながらも、甘みと酸味を重視したお酒がトレンドに上がっています。
個人的には、この甘酸ジューシー系の日本酒はけっこう好きなタイプでして、自然と手が伸びてしまいます、だってわかりやすくウマイですもん、実際よくできてますよね。
しかし、トレンドの弊害というのはあるもので、いったん味わいのトレンドが形成されると、色んな酒蔵が真似し出し、どの店に行っても似たような味の酒しか置かなくなるのは困ったものです。どれを飲んでも同じ味、もしくはシーンの最前線の酒の劣化コピー。のっぺらぼうか、金太郎飴か。本当に信念があってそれやってんのか、と思うことはしばしばあります。
トレンドに付和雷同するかのごとく、追従するのは簡単ですが、シーンのてっぺんに存在する酒よりウマイものを作らなければコモディティ化は必至。トレンドに乗るということは、実は棘の道を進むということに他ありません。
と、枕が長くなってしまいましたが、今回はトレンド無視で我が道を行く超個性派日本酒を紹介します。
それがコチラ、福井県・美川酒造場の『舞美人』です。
2本とも無濾過生原酒で、左が山廃純米(蔵付酵母仕込み)で右が特別純米ですね。
この『舞美人』という銘柄、世間ではどれくらい認知されているのでしょう?日本酒マニアの間では超絶酸っぱい酒として知れ渡っており、「舞美人を飲んで日本酒に対する価値観が変わった」という方もいたりいなかったり。
私も年に数回はいただく機会がありますが、クレイジーすぎる酸味に顔をしかめながら飲むこともしばしばです(笑)「うわ、すっぺー!!もう一杯!」って感じわかりますかね?(笑)
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さぁ、ではさっそく『舞美人』の無濾過生原酒を2種類いただきます。
ちなみに、舞美人を初めて飲むという方には、火入れバージョンより無濾過生原酒の方がオススメ。一番の特徴である酸味を十分に堪能するなら間違いなく無濾過生原酒、なおかつ火入れより飲みやすいはずです。
まずは『舞美人 山廃純米 無濾過生原酒 sanQ』から。
美川酒造店が得意とする山廃仕込みのお酒ですね。最近では生酛造りにもトライしているそうで、機会があれば生酛バージョンも飲んでみたいところ。
写真はありませんが、グラスに注がれた液体は黄色く、いかにも一癖二癖ありそうな雰囲気(笑)山廃で、蔵付き酵母で、無濾過生原酒で、酸度は4.0ですからね~バッチバチにきてますよこれは!
香りはややパイナップル、それも皮の近くで、渋味苦味もありそうなニュアンス。強烈な酸味の前兆。口に含む前に身構えてしまいます。
おそるおそる口をつけると、フレッシュな香味とともに丸みのある旨みが飛び込み、一瞬で強烈な酸味にシフト!
鋭く激流のような酸・酸・酸!!わかっちゃいたけど、知ってはいたけどめちゃくちゃ酸っぱい!思わず「うおおおおおおお」と唸ってしまいました(笑)
なんだこれは、黒酢?リンゴ酢?これを普段日本酒を飲まない人に飲ませても日本酒だとは気づかないのでは、と思ってしまいます。それぐらい別次元、異質な日本酒。毎日飲みたいとは思わないけどたまに猛烈に飲みたくなる、私にとってはそんな感じのお酒ですね。
続いては『舞美人 特別純米 無濾過生原酒』をいただきます。
さきほどの山廃バージョンは原酒ながらアルコール度数は控えめでしたが、こちらはアルコール分18度以上とそこそこ強め。特別純米の無濾過生原酒も毎年テイスティングしていますが、sanQよりももっと玄人向けだった印象…今年はどうでしょう?
香りはわりと控えめ、しかし渋味が強そうな前兆が。強烈なsanQを飲んだ直後だからか、あまり鼻が利きません…(笑)飲む順番間違えたかな…?
これまたおそるおそる口にすると、米の旨みと、sanQと比べるとやや大人しめの酸がやってきます。sanQのようなブッ飛んだ酸味はないけど、やはり太い味というか力強さはありますね。酸味のあとに遅れて渋味・苦味が一気に表れ、グッとドライな流れに。いやいや大人の味わいですね、かなり渋味が強いですよ。そういえば特別純米の火入れも毎年こんなニュアンスだったかなぁ。
おわりに
そんなこんなで『舞美人』2種テイスティング美味しくいただきました!
どちらが好みかと言われると、個人的には『舞美人 山廃純米 無濾過生原酒 sanQ』に軍配が上がるでしょうか?酸味が強烈ですけど、黒酢ライクな酸なのでとっつきやすいんですよね。
まだ『舞美人』を飲んだことがないという方は、ぜひsanQで『舞美人』のエクストリームな世界観を感じていただきたいですね!
【追記】後日、『舞美人 sanQ 滓』にごり酒バージョンをいただきました。ぜひコチラの記事もどうぞ。
それではまた。
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