こんにちは、しーたか(@s_sakearchive)です。
今回は宮城県・大沼酒造店の『乾坤一 純米酒 愛国』をご紹介します。
乾坤一の蔵元・大沼酒造店があるのは宮城県の村田町。創業1712年、300年以上の歴史を持つ蔵です。『乾坤一(けんこんいち)』という酒銘は、明治時代に初代宮城県知事がこの蔵の酒に惚れ込み、「天地を潤す一滴であれ」と名付けたのが由来だそうです。
『乾坤一』の定番といえば、ササニシキを使った純米酒ですよね。穏やかな味わいにスマートなキレの良さを兼ね備えていて、実にうまいものです。「村田で作られ村田で醸す、村田を味わう酒」という蔵のコンセプトを体現する一本で、地元の飯米で勝負するところに蔵の哲学が宿ります。
個人的な『乾坤一』との出会いは、おそらく旧体制の頃の『若手の夜明け』だったかなと記憶しています。
以前の『若手の夜明け』は、イベントの性格上そうなりやすいのでしょうが、各蔵が持ってくる日本酒は、ほとんどが冷酒で映えるタイプばかりでした。
フルーティーで華やか、もしくは甘酸系のテイストなど、冷たくしてキャッチーに飲ませる酒が会場の主流。
そんな中で、『乾坤一』は常温や燗酒でも旨い酒を堂々と出していたのです。同じく印象に残っているのが『白隠正宗』で、こちらも常温・燗で勝負していた蔵です。
『白隠正宗』にいたっては蒸し燗まで披露してましたからね(笑)冷酒が圧倒的に優勢な会場において、この2銘柄の存在感はとかく異質でした。
おもしろいことに、『乾坤一』も『白隠正宗』も、『愛国』を使っている蔵という共通点もあります。
『愛国』は明治時代に『亀の尾』『神力』と並んで三大品種と呼ばれた歴史的な米で、『コシヒカリ』や『ササニシキ』のご先祖にあたる品種。ただ、背が高くて倒れやすく栽培が難しいことから、いつの間にか姿を消していった幻の米です。そんなお米を使って酒造りをする蔵が、揃って燗映えする酒を造っているというのは、偶然にしてもなかなか面白いですよね。
今回の『愛国』も、定番の『ササニシキ』とはまた違う顔を見せてくれるはず。
『乾坤一 純米酒 愛国』の裏ラベルはこちら
スペック表も貼っておきます。
| 原材料 | 米(国産)、米麹(国産米) |
| 原料米 | 愛国 100% |
| 精米歩合 | 60% |
| アルコール分 | 16度 |
香りはとても穏やか。バナナを思わせるほのかな甘い香りと、穀物様のニュアンスが静かに漂います。知ってはいましたけど、吟醸香で勝負する感じの酒ではないですよね。
口に含むと、まず落ち着いた米の甘みと旨みが広がります。ただし、甘さが前面に出てくるタイプではありません。若干のアルコール感を伴いながら、舌に馴染むような渋みや酸味、そしてほろ苦さが複層的に現れてきます。
味わいで特に印象的なのは、旨みが酸味を従えるようにして存在しているという点。酸がただ突出するのではなく、旨みという太い幹に酸味が寄り添って全体の骨格を形成している感じですね。結果として、ビターで落ち着いた味わいに仕上がっています。
ただ、味に深みはあるのに、不思議と後味は軽いんですよね。重たさを引きずらない抜け感がある。ここが、この酒を渋い通好みの酒で終わらせていないポイントだと思います。
開栓してすぐはアルコールの角が若干感じられるので、開栓して数日経ってからの方がよりいい感じに楽しめます。空気に触れることで酸味の角が取れ、旨みがじわじわと開く。熟成ポテンシャルもあるので、思い切って存在を忘れるぐらい放置してしまってもいいかもしれませんね。
温度帯は、やはり常温から燗酒が本領発揮のゾーンでしょう。ぬる燗から上燗あたりで飲むと、この酒の懐の深さがよくわかります。
熟成、燗酒向きということもあり、一見マニア向けの酒のように聞こえますが、全くそんなことはありません!たしかに味の設計は攻めているのですが、不思議ととっつきにくさがないんですよね。
食中酒としてのポテンシャルも高く、常温なら脂の乗った焼き魚、燗にすればおでんや鍋物との相性が抜群。穀物的な香ばしさがあるので、味噌料理や燻製系のおつまみとも面白いペアリングになりそうです。
おわりに
さて今回いただいた『乾坤一 純米酒 愛国』、明治の幻の米を復活させて醸した、大沼酒造店のこだわりが詰まりまくった一本でした。
定番の『ササニシキ』と比べると、味の幅も奥行きもより感じられましたね。華やかさはありませんが、穀物の力強さと旨みに支えられたビターな味わいには、確かな個性と説得力があります。
自分は今回四合瓶で購入してしまいましたが、この酒は本来一升瓶でじっくり向き合う案件でしょう。
それではまた。
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